競馬を見ていて、「騎手の人が使っている鞭はなんで使うの?」「馬は大丈夫?叩けばいいってわけじゃないよね?」など、鞭について疑問に思ったことありませんか。
競馬好きなら見慣れてしまっているかもしれませんが、初心者ならやや痛々しい気持ちにもなることでしょう。
しかし、しっかりと競馬にもルールがあり、ルールを破ると罰則があるので競技です。
この記事では、競馬で使う鞭についてご紹介していきます。
鞭はなぜ使う?
競馬で騎手が馬に鞭を使うには大きく2つの理由があります。
- ラストスパートの合図
- 馬をコントロールする
ラストスパートの合図
ゴール前に最後の追い上げの合図として鞭を使用し、ラストスパートをかけさせます。
この時鞭を叩く強弱は関係なく、あくまでラストスパートの合図でしかなく、これは調教で「鞭が入ったら走る」という教え込みが幼い頃にされるためラストスパートがかかるのです。
馬をコントロールする
走っているときに馬がまっすぐではなく、内や外に流れてしまうことがあるため、それをコントロールする手段として鞭を使います。
コントロールができなくなると、レースから外れてしまったり、他の馬と衝突する危険性や新興妨害で失格になるため、馬のコントロールは騎手の大事な仕事です。
そして、基本的には馬がそれた方向に鞭を入れてコントロールするため、騎手は左右の手で鞭が扱えないといけません。
鞭の5つ使い方
鞭には、5つの使い方があり、騎手は状況判断や馬との相性に合わせて鞭を使い分けます。
- 見せ鞭(みせむち)
- 肩鞭(かたむち)
- 手鞭(てむち)
- 出鞭(でむち)
- 風車ムチ(ふうしゃむち)
見せ鞭(みせむち)
言葉の通り、馬に鞭を見せるだけの方法。
これは、実際に鞭で叩いてしまうと逆にやる気を失ったり、コントロールができなくなってしまう馬がいるためです(馬も生き物なので相性や使い方は馬それぞれです)。
馬によっては、鞭を叩く一段回前のステップで鞭を見せておいて、次に実際に鞭を入れる、という使い方もあります。
肩鞭(かたむち)
お尻に鞭を入れるのではなく、馬の肩に軽く鞭を当てる方法。
見せ鞭と同じで、馬の視界に鞭が入るので、叩かれるのが嫌な馬に有効な使い方です。
手鞭(てむち)
レース中に鞭を落としてしまったときだけに使う、騎手が手を使う特殊な方法。
稀に鞭ではなく、ちょっとした合図として手を使う人もいるみたいです。
出鞭(でむち)
スタート直後にムチを入れる方法。
スタートダッシュが遅かったり、スロースターターな馬にはスタート時に鞭を入れて最初から使うことがあります。
風車ムチ(ふうしゃむち)
風車のように鞭をブンブンを回しながら打つ方法。
鞭のルール改定によってほとんど使われなくなった方法です。
鞭が大きく回るため見せムチの効果もあるよう。
鞭を使うときの制限
鞭を使うときには、以下のような項目が制限されています。
- 馬が怪我をするほど(過度に強く)鞭を使用すること。
- 肩より上方に腕を上げて鞭を振り下ろすこと。
- 反応(脚勢)のない馬に対し、必要以上に鞭を使用すること。
- 明らかに着順の大勢が決した後に、必要以上に鞭を使用すること。
- 入線後に鞭を使用すること。
- ひばら(脇腹)へ鞭を使用すること。
- 鞭を過度に頻発して使用すること。
- 頭部若しくはその付近に対して鞭を使用すること。
- 原則として鞍より前方に逆鞭で鞭を使用すること。
上記の制限は、とても抽象的な表現のため、見る人によっては印象が変わってきてしまいます。
そのため、鞭の使用回数には明確なルールが設定されています。
鞭を使うときのルール
日本競馬では、「1レースの中で連続10回を超える鞭の使用」は制裁対象になります。
「連続10回」とは、馬の歩幅(1完歩:7~8m)のうちに使用されることです。四足歩行の馬の歩幅は、1本目の脚が地面を離れたときから、4本目の脚が着地した地点まです。
なので、人間でいうと、右足が地面から離れたときから、左足が着地した地点まででしょうか。
その間に10回鞭を打つと制裁対象なのです。
鞭に関するルールを破ったときの罰則
鞭を使うときのルールに違反すると、以下の罰金が課せられます。
- 1回目:戒告
- 2回目:1万円
- 3回目:3万円
- 4回目:5万円
- 5回目:7万円
- 6回目以降:10万円
制裁は、毎年1月1日にリセットされます。
鞭を使いすぎてしまう「油断騎乗」とは?
「油断騎乗」とは、1番手と大きな差があった2番手が、「もう勝てない」と力を緩めて走っていると3番手に抜かれてしまうように、馬に精一杯走らせずに油断して騎乗することです。
そして、この油断騎乗の制裁は、以下の3つがあり、鞭の制裁よりも重いものとなっています。
- 戒告
- 罰金10万円
- 騎乗停止
さらに、制裁だけでなく、馬券を購入している観客からも重い言葉を浴びせられるため、油断騎乗にならないために鞭を使いすぎてしまう、ということが発生してしまうこともあるのです。
観客から見ると油断騎乗やしてほしくないですが、動物愛護の面で見ると鞭の過剰な使用は避けてほしいと考えます。生き物なのでとてもむずかしい観点ですが、人間にとっても馬にとっても競馬が良いものであると長っていますし、今後も騎手と馬にはリスペクトして競馬を楽しみたいです。
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